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サウンドマネージャー尾形が語る

「マランツ のサウンドフィロソフィー」

GPD エンジニアリング マランツ サウンドマネージャー
尾形好宣


「マランツ公式ブログ」がこのたび創刊となりました。
その記念すべき第1号に登場するのが、
マランツのサウンドマネージャーである尾形好宣。
あらゆるマランツ製品の音に責任を持ち、彼がゴーサインを出さない限り、
マランツ製品は世の中に出ることはない。
それがマランツのサウンドマネージャー。

その尾形が考えるマランツのサウンドフィロソフィーとは何か、
そして今後のマランツはどんな音を目指すのか、について語ります。



 

すべては「オーディオ・コンソレット」からはじまった



 

●最初にマランツについて簡単にご説明いただけますか。

尾形:マランツは1953年にアメリカで生まれたブランドで、ブランド名は創業者であるソウル・B・マランツの名前に由来しています。彼はもともとオーディオや音楽が好きで、クラッシックギターやチェロを演奏する音楽愛好家でもありました。熱烈なレコード音楽ファンであった彼が当時世の中に存在するオーディオに満足できず、オーディオを自作したのがマランツの始まりでした。

●創業者のマランツ氏は、なぜ市販のオーディオに満足できなかったのでしょうか。

尾形:当時はLPレコードが出始めた頃でした。その頃は録音特性が各社まちまちであり、フォノイコライザーにも今のような統一規格がありませんでした。ですから市販のオーディオ機器ではそれぞれのレコード盤に記録された音を正確に再生することは困難でした。

●マランツ氏が自作したのは、どんなオーディオ機器だったのですか。

尾形:1台でそれぞれのレコードに応じて最適なフォノイコライザーを切り換えられる機能をもったプリアンプを制作しました。そのプリアンプを作り上げるためには4年もの歳月がかったそうです。できあがったプリアンプは「オーディオ・コンソレット」と名付けられました。


↑マランツ試聴室に設置されているマランツの最初期の製品「オーディオ・コンソレット」。「record equalizer」のツマミでフォノイコライザーのタイプを選ぶことができる。

●このオーディオ・コンソレットが、マランツの出発点ということでしょうか。

尾形:その通りです。当初はそのオーディオ・コンソレットを自分のオーディオシステムとして使っていたのですが、彼の周囲の音楽ファンの間で大変な評判となったため、注文を受けて生産を始めました。それがオーディオメーカーとしてのマランツの始まりです。設立以降マランツは、ステレオアンプModel 7、モノラルパワーアンプModel 9といった歴史的な銘機をはじめとする革新的な製品を世に送り出していきます。



マランツのサウンドフィロソフィーとは






●オーディオメーカーにはそれぞれ独自のサウンドがあると思いますが、「マランツの音」とは、どんな音なのでしょうか。

尾形:まず、私たちが目指しているのはマランツの「音」ではないんです。レコードやCDなどのメディアに入っている音をそのまま再生することを目指しています。CDにしても、ハイレゾ音源にしても、今の音源にはたくさんの情報が入っています。それらをすべて、ありのままに再現する。つまり音楽を作った人たちが「こういうふうに音楽を表現したい」と思って入れた音を、あますところなく音楽として再生する。それがマランツの考え方です。スピーカーの前で目を閉じて音楽を聴いた時、いかにも「スピーカーから音が出ている」のではなく、まるで目の前で楽器が演奏されているように聴こえる、あるいは、音楽制作者が意図した通りのイメージで音楽を再生する、それが私たちの目指すところです。

●いわゆる「マランツの音」というものは存在しないということでしょうか。

尾形:いわゆる”マランツの”音というものはありませんが、マランツの目指す音はあります。それを表現しているのがサウンドフィロソフィーです。1950年代の設立当初は“Realistic Reproduction of Music Is Our Premises”というものでした。つまり、「音楽をリアルに再生することが、我々のするべきこと」といった意味でしょうか。これは創業者のマランツ氏の言葉です。現在は“In Pursuit of Purity”がサウンドフィロソフィーとなっています。これは「純粋さの追求」という意味であり、言い方こそ変化しましたが、本質的には、何も加えず、何も引かず、記録された音楽をそのままリアルに、純粋に再現する。それがマランツのフィロソフィーです。そして、マランツにはいろんな価格帯の製品がありますが、すべての製品が一貫してこの「純粋さの追求」というフィロソフィーの下で作られています。



●つまり「純粋さの追求」は、言い換えると「原音再生」ということでしょうか。

「原音再生」という言葉は多くのメーカーがコンセプトとして掲げています。その「原音再生」が目指す山の頂点だとすると、そこに到達するための道、つまり手法はさまざまで、メーカーによって異なります。たとえば16bit/44.1kHzで記録されているCDをアップサンプリングなどの手法でアナログ波形に近づける技術があります。またCDの音にある種のプロセッシングを施してアナログレコードに近づけるといった技術や、スタジオで録音された音楽にクラシックの大ホールで聴いているような残響を付加できるモードをもった機器もあります。これらは音楽の楽しみ方としては面白いと思います。

しかし私たちは基本的にそうした方向には向かいません。録音されたデータに対して「何も足さない、何も引かない」というポリシーで、あくまで記録された音に手を加えることなく、余すところなく音楽として再生する、それがマランツの一貫したスタイルなのです。

●「録音された音を忠実に再生する」という信念は、マランツの創業の契機となった、プリアンプを自作した話にも通じますね。

尾形:そのとおりです。ですからマランツの一号機であるオーディオ・コンソレットは、常に私たちのルーツなのです。創業者のマランツ氏がやろうとしていたのは、レコードの音溝に刻まれた音を、そのまま、正確に再生したい、ということでした。そのために彼はプリアンプを自作したわけです。そのスピリットがマランツのルーツであり、今でも守り続けている本質でもあります。



マランツはどこから来て、どこへ行くのか




 

●尾形さんは先代の澤田龍一さん(現・D&Mホールディングス シニアサウンドマネージャー)からマランツのサウンドマネージャーを引き継いで3年目となりますが、尾形さんとして変えていこうと思っている点はありますか。

尾形:先ほども申し上げましたが、マランツが掲げている「純粋さの追求」というサウンドフィロソフィーは変わりませんので、サウンドマネージャーが交代したからといって、マランツの音を変えましょう、という気持ちはありません。ただ、マランツの製品から出てくる音は現実的には年々変わってきています。これはパーツや素材の品質向上、そして技術やノウハウの蓄積によるものです。また私たちが輸入代理店業務を行っているB&Wのスピーカーをはじめとして、再生系の機器もどんどん向上していますので、オーディオが出せる音の精度も上がっています。さらに言えば音源も以前のLPからCDへと変わり、さらにSACD、ハイレゾ音源と進化してメディアが記録できる情報量も飛躍的に上がっています。音源の情報が増えれば、当然再生される音も変わってきますので、そういったオーディオの状況の変化を見つめながら、それらに対応して進化していくことは大切だと思っています。

 

●「純粋さの追求」というフィロソフィーは不変だが、メディアの変化や技術的な革新に対応して、常に音の精度は高めていく、ということでしょうか。

尾形:そうですね。常に時代をキャッチアップして、音源に記録されている音を純粋に再生することを目指し続ける、ということでしょうか。ですから最新のモデルが一番良い音がすると評価していただけること、それがマランツの進化の証しだと思っています。

サウンドマネージャー尾形が語る「 マランツ のサウンドフィロソフィー」はいかがでしたでしょうか。多くのオーディオメーカーが『原音再生』を謳っていますが、派手なギミックには見向きもせず、メディアに記録された音に対し、何も足さず、何も引かず、そのまま再現する、というフィロソフィーは、まさに創業以来の「マランツのDNA」と言えるでしょう。

2018年11月1日

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