マランツブログ番外編「ホームシアターでゲームをしよう!」
by オーディオビジュアル・プレゼンター 逆木一


今回のマランツブログは番外編です。オーディオやホームシアターの楽しさを伝えるオーディオビジュアル・プレゼンターとして活躍中の逆木一氏にホームシアターでゲームを遊ぶ醍醐味を教えていただきます。

「オーディオで楽しむコンテンツ」というと、真っ先に思い浮かぶものは何でしょうか? これについては捻って考える必要もなく、素直に「音楽」という答えが出てくるでしょう。
それではもう少し意識を広げて、「シアターで楽しむコンテンツ」はどうでしょうか。映画、アニメ、ドラマといった、「映像」という答えがすぐに出てくると思います。もっとも、「再生機器にこだわり、音楽だけでなく映像も楽しめる環境」=「シアター」なので、当たり前の話かもしれませんが。

音楽と映像。このふたつが、オーディオビジュアルの趣味における二大コンテンツであることは否定しません。しかし私は、ここで「ちょっと待って」と言いたい。「何か忘れていませんか」と言いたいのです。
私が声を大にして伝えたい、シアターで楽しむ音楽と映像に続く第三のコンテンツ、それが「ゲーム」です。

ゲーム自体は音と映像で構成されているため、映画やアニメと同様にシアターの恩恵を全面的に受けるコンテンツです。それでいてゲームにはプレイヤーによる介入を前提とする、すなわち「インタラクティブ性」があり、そこに「見るだけ」の映画やアニメとは一線を画す楽しさが生じます。

特に素晴らしいのが「ゲームの音」で、然るべき環境で遊んだ暁には、プレイヤー自身の操作に応じてリアルタイムに千変万化する音の奔流がもたらす、時として映画をも凌駕する圧倒的な臨場感と没入感が生じます。これはまさしく、ゲームでしか味わえない音響体験の極致であると言えます。

しかし残念なことに、オーディオの世界で、ゲームというコンテンツは長らく、ほとんど無視されていると言っていい状況が続いてきました。その理由についてはいろいろと思い当たりますが、話し始めると長くなるのでここでは深入りしません。とにかく、オーディオブランドのオフィシャルブログでこのようにゲームを扱う記事が掲載されること自体、一昔前までは信じられないようなことでした。時代は変わりつつあるのだと実感しています。

音楽と映像とゲームの3つは、物心ついた時からずっと私とともに在りました。私がオーディオビジュアルの趣味に目覚めてからも、常にそれらを自分のシアターで楽しんできました。もし「ゲームなんてオーディオ/シアターとは関係ない」と考えているなら、それは大きな誤解です。
いまさらこの場で「オーディオで音楽を聴こう」とも「ホームシアターで映画を見よう」とも言う必要はないでしょう。なので、心から叫ぼうと思います。


「ホームシアターでゲームをしよう!」


それでは、実際に「ゲームを楽しむシアター」を作ってみましょう。

「ゲームを楽しむシアター」といっても、何かしら特別な機材が必要というわけではありません。AVアンプとスピーカーという基本は変わらず、そこにゲーム機が加わるだけです。
なお、ゲームは現状最も進化した映像コンテンツでもあります。最新のゲームを最高の状態で楽しみたいと思えば、ゲーム機と接続するAVアンプの側にも最新の仕様が求められます。

以上のことを踏まえ、まずは「これからシアターを始める」ことを想定して、最新の家庭用ゲーム機であるPlayStation 5(以降『PS5』)と、AVアンプにはNR1711、スピーカーにはBowers & Wilkins 707 S2を用意しました。

システムの要となるNR1711はHDMI 2.1の新機能の多くをサポートしており、PS5との接続においてもボトルネックになることがありません、さらに、AVアンプとしては例外的に薄型でありながら現代において必要とされる機能を網羅し、システムをバイアンプやオブジェクトオーディオに発展させることも可能。はじめてのAVアンプとして「間違いのない選択肢のひとつ」と胸を張って言えるモデルです。707 S2との組み合わせはごくシンプルであると同時に、AVアンプ単体でバイアンプ駆動が可能なため、スピーカーの実力を最大限に発揮できます。

少し脱線して昔話をすると、私が大学時代に初めて買ったAVアンプはマランツのPS4500というモデルでした。当時PS4500をもって必死に構築した5.0chの感動はあまりにも大きく、私の中で「ゲーム×シアター」というコンセプトが確立されました。「この体験がたとえ一時でも出来なくなるなんて考えられない」ということで、帰省した際もシアターを楽しめるようにと、後にPS3001というモデルを実家用に購入したほどです。NR1711はPS3001よりも遥かに多くの機能をずっと小さなサイズに搭載しており、両者の比較はAVアンプの進化を感じさせます。


ちなみにPS3001はまだ手元にあります


パーソナルな空間にシアターを作ることも考えて、27インチのPCモニターを中心に組んでみました。私が初めてシアターを構築した時に使っていたのは21インチのブラウン管テレビなので、なにやら懐かしさを感じる光景です。なお、707 S2は比較的小型のスピーカーなので、テレビラックに直置きすることもじゅうぶんに可能であり、NR1711の省スペース性も相まって、システムを構築するうえで高い自由度があります。

この環境で、『エースコンバット5 ジ・アンサング・ウォー』(以降『AC5』)をプレイしてみました。AC5は架空世界で実在の戦闘機を飛ばすフライト・シューティングで、続編である『ZERO』とともに、まさに私が最初期のシアターで遊んでいたタイトルです。

アフターバーナーをめいっぱい噴かし、空気を切り裂いて飛翔する戦闘機の存在感、無線を通じて飛び交う敵味方の緊迫した音声、戦場を包み込むオーケストラによる重厚な音楽などなど、AC5のゲームプレイは大量の音で溢れていますが、NR1711と707 S2の組み合わせはそのすべてを混濁させることなくしっかりと描き分けるとともに、迫真の表情をもって聴かせます。

このシステムはスピーカーが2本、つまりサラウンドではないステレオ環境のため、「後ろから音が聴こえる」という実感こそありませんが、テレビ/モニターから音を出している状態との差は歴然です。707 S2という優秀なスピーカーを使っているおかげで、ステレオ感/横方向のリアルな音の移動感も存分に味わえます。少なくともサウンドに関して不満の有無を問われたら、「無い」と即答するでしょう。まさにゲームにおいても、架空の世界にリアリティを与えるのは音なのだということが実感できます。

さて、ゲーム好きにとって、ゲーム自体を遊ぶことはもちろん、作品のサウンドトラックを聴くこともまた重要な体験です。また、オーディオのソースとして「ゲーム音楽」を愛好するオーディオファンも決して少数ではありません。

NR1711はネットワークオーディオ機能「HEOS」を使って、AVアンプ単体でネットワーク経由の音楽再生が可能です。つい先ほどまでゲームをプレイしていたシステムで、同じタイトルのサウンドトラックを聴く。昨今のAVアンプを中心に作られたシアターは、ゲームの楽しみを大きく広げてくれます。

ステレオの環境でもじゅうぶんに楽しめるとしても、さらなる体験が欲しくなったら? ……可能性は無限大です。
十数年も前から、「ゲームの音」はサラウンド対応が当たり前。それこそ、PS2世代のタイトルであるAC5でさえ、ドルビープロロジックⅡによるサラウンドに対応していました。こうしたゲームの音の真価を最大限発揮させようと思えば、やはりマルチチャンネル・サラウンド環境は欠かせません。

とはいえ、5.1chとか、7.1chとか、果ては7.1.4chとか、そういう規模のシステムでなければサラウンドにあらず、というわけではありません。しっかりしたステレオのシステムを基本として、後方にスピーカーを2本追加する、つまり「4.0ch」のシステムでも、サラウンドの醍醐味は完全に味わえます。そして後方のスピーカーの置き場所も、厳密に完璧である必要はありません。NR1711然り、現代のAVアンプにはスピーカーの置き場所や部屋の環境を踏まえて再生音を補正する機能があるため、スピーカーの設置の自由度も大きく向上しています。もちろん基礎基本に忠実にしっかりとしたスピーカー配置を行うに越したことはないのですが、サラウンドの導入のハードルは決して高くない、ということは伝えておきたいと思います。


一般的なリビングルームを想定した規模感のシステム
スピーカーは706 S2、AVアンプはNR1608、どちらも筆者所有の製品で組んでみました



筆者のメインシステムでNR1711と707 S2でサラウンドを構築するとこうなります


まずはステレオで「ゲームの音」の素晴らしさを知り、4.0chでその真価を味わい、さらなる体験を求めてシステムを発展させていく。これは「ゲーム×シアター」を実践するうえで理想的なステップだと言えます。

繰り返しになりますが、「ゲーム」はシアターにおいて「音楽」や「映像」と並び立つ素晴らしいコンテンツです。今までオーディオの世界の側から本当の意味でゲームの世界に歩み寄ることがほぼなかったために、「ゲームとオーディオ/シアターは無関係」という認識が広く根付いているかもしれませんが、これは勿体ないことこのうえない。そんななかで、マランツがこのような場を作ってくれたことを本当に嬉しく思っています。

この記事を通じて「ゲーム×シアター」になんらかの魅力を見出してくれたなら、いちオーディオファンとして、いちゲーマーとして、歓喜に堪えません。


この記事の著者:逆木一(ライター/評論家、オーディオビジュアル・プレゼンター)
オーディオやホームシアターを心の底から愛し、オーディオ専門誌・Webなどで評論家として活躍中。Webサイト「Game Sounds Fun」の管理人でもあり、「ゲーム×シアター」の楽しさをすべてのゲームファンに伝えるべく活動している。


2021年4月22日