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音楽之友社刊 レコード芸術誌 2005年12月号

  レコード芸術誌(音楽之友社刊/2005年12月号)、注目製品ピックアップ(3)
ヴァイオリニスト・川井郁子さんと聴く ミュージック・ダイアログ プラチナム・シュプリーム
■山之内正(文)
 
     
 
 今回は演奏、作曲を中心に幅広く活動されているヴァイオリニストの川井郁子さんをゲストにお迎えし、マランツの「プラチナム・シュープリーム」を聴いていただいた。SA-15S1+PM-15S1のペアに、日本に到着したばかりのB&Wの新シリーズからXT4を組み合わせたシステムだ。
川井さんは最新アルバム『嵐が丘』の最終ミックス前の音源を持参し、熱心に耳を傾ける。
 
演奏の場の雰囲気が見え
楽器の個性もよく出ている
 アルバム『嵐が丘』には、ブルガリアへの川井さんの熱い思いが込められている。最初の《嵐が丘》は、パーカッション、ブルガリアの女性合唱、尺八が織り成す不思議な響きと情感豊かなヴァイオリンが印象的な曲だ。「まるでスタジオで聴いているように各楽器がクリアに分かれて聴こえます。
 
 

私の立ち位置とほかの人の立ち位置の関係が見えるような音ですね。家でチェックしているときには気付かなかった新しい発見もあります。たとえばツイン構成のパーカッションの片方をもっと引き立たせるとどうなるかとか、そんなことも考えながら聴いていました」。
  ブルガリアのミュージシャンと一緒に演奏することになったきっかけは、川井さんが以前から好きだったブルガリアン・ボイスをぜひ採り入れたかったからだという。「普通の発声ではなく、まさに天空を突き抜けるような、人間的なものを超越した響きが圧倒的です。生で聴くとそれを余計に強く感じました。存在感が、ファルセットで歌うコーラスとは全然違うんです。なかに秘めた強さが声に現れていて、実際にはおとなしくて恥ずかしがりやの人たちなんだけど、そのギャップがまたいいですね。オーケストラも私の好きな枯れた響きがする。特に弦楽器がそうです。西側の艶やかな響きとは違って、内省的な響きなんです。楽器、ミュージシャンのキャラクター、会場の作りなどが組み合わさってそれが出てくるんだと思います。その独特の響きが聴き取れました」。

 
     
 
  次に聴いた《エル・チョクロ》はアルゼンチンタンゴの名曲。シンプルなピアノ伴奏で激しさを秘めたヴァイオリンが美しい。「いま聴いたヴァイオリンの音色はとても密度の高い音でしたね。これまで聴いたなかで一いちばんそう聴こえました。今回は、今年の5月から使い始めたストラディヴァリウスでの初めての録音なんです。どんどん音が変わっていく楽器で、発見の連続ですが、その楽器の個性がすごくよく出ていると思いました。ピアノの響きは、デュオならではの厚さ、編成の厚さとは違う独特の厚さが感じられて、タンゴらしい音になっていましたね」。
  今回のCDとカップリングされるDVDには、無国籍的雰囲気が漂う幻想的なビデオクリップが収録されている。どこか外国で撮影したのかと思ったら意外なことに日本で収録したのだという。「最初は砂漠で撮りたかったんですよ。曲を書くとき、頭のなかにそんな風景がありました。どこだかわからないような映像と感じていただけたのならそれは成功ですね。最初からある物語を曲にするというのではなくて、曲を作る過程でストーリーが浮かんできたり、情感に共鳴したりして、一気に曲が仕上がることが多いんです。これもそういう曲のひとつですね」。
作曲家、演奏家のイメージするものを再現してくれるシステムを求められている。洗練されたデザインも評価されていた。
 
     
 
Music Dialog Platinum Supreme
シルバーに統一されたコンポーネントが高貴な雰囲気を醸し出す。
ヴァイオリンは繊細なイメージだけでなく
強さや激しさなどもストレートに感じて欲しい
 これまでヴァイオリンの演奏が活動の中心だったが、これからは作曲にも積極的に取り組んでいきたいと語る川井さん。いろいろ新しい試みにもチャレンジしている。「曲作りの比重を大きくしたいと思っています。ヴァイオリンだけではなく、いろいろな楽器に広げたいですね。たとえば今回尺八を加えたのは、やっぱり日本人だから和の響きが欲しいと思ったからです。和太鼓の響きや笙、篳篥の音も好きです」。
  今回のアルバムでも強く意識しているのが、音楽とドラマ、ストーリーの融合だ。「私のテーマのひとつにしていきたいですね。アルバムの録音とは別に、コンサートでもあり、お芝居でもあるというステージを最近始めました。きっかけは寺山修司さん原作のお芝居で、主演だったのですが、演じながらヴァイオリンで表現する舞台でした。
 
  固有のキャラクターがあるので、コンサートで味わうような解き放たれる感覚を味わえないかと思ったら、実際は逆で、トランス状態になるような体験をしました。それで、自分に向いている表現手段かもしれないと思って、今年から「Duende(ドゥエンデ)」という新しい形態のステージを始めたんです。言葉と音楽の融合は、オペラやミュージカルでは当たり前なんですけど、それをヴァイオリンでやるんです。言葉ほど明確に表現するわけではないですけれど、それが見る人にかえって想像力を掻き立てるというか、言葉以上にストレートに表現できることがあるんです」。
  曲を作ったときに近いイメージで「プラチナム・シュープリーム」の音を聴くことができたという川井さんから、私たち聴き手へのメッセージを最後に紹介しよう。「ヴァイオリンは人の気持ちをストレートに表す楽器で、言葉で限定できないような表現ができます。日本では優美で繊細なイメージが強い楽器ですが、強さや激しさなど、普段なかなか発散できない感情を込めることができます。そこをストレートに感じていただきたいと思います」。
 
 
   
川井郁子 プロフィール

ヴァイオリニスト
2003年12月、東京国際フォーラムで自作の《オーロラ》を東フィルと共演、大成功を収めた。また舞台では、自身の音楽世界に加え独自の表現世界を持ち、舞踏劇・音楽劇の出演や、2005年からはオリジナルステージ『Duende(ドゥエンデ)』のシリーズ化など、ますますその活動の場を広げている。また、大阪芸術大学教授として後進の指導にもあたっている。
使用楽器:アントニオ・ストラディヴァリウス(1715年製作、大阪芸術大学所蔵)
   
 
   
 
【試聴したCD】  
嵐が丘
川井郁子(vn)、ディアン・パブロフ指揮ブルガリアンso、ヴァニア・モネーヴァ指揮コスミック・ヴォイセス・フロム・ブルガリアcho, J.ディヴィド(vo),他[ビクターエンタテインメント CD:VICC60455、CD+DVD:VIZC6]
小説『嵐が丘』(エミリー・ブロンテ作)の主人公の激情を余すところなく表現した自作曲などを収録。初回限定盤のDVDセットも発売される。
 
 
   
 
〈Music Dialog Plutinum Supreme〉

プリ・メインアンプ: PM-15S1 \157,500
SuperAudioCDプレーヤー:SA-15S1 \157,500
スピーカー:B&W XT4 \367,500 (ペア)

組み合わせ価格 \682,500

写真のオーディオ・ラックは撮影のために用意した参考商品です。
B&W XT4生産完了のため、本組み合わせは終了いたしました。